一橋大学国際・公共政策大学院(IPP)では、平成18年4月から平成23年3月(2006年4月−2011年3月)まで5年間にわたって、主として自然災害(第1期)および人為的リスク(第2期)の対応に焦点をあてた研究・教育プロジェクト「公共部門のリスク・マネジメントに関する学際的研究」を推進してきました。
【第1期:平成18‐20年度(2006年4月−2009年3月)における活動】
プロジェクトの主な構成メンバーは、IPP教員(公共経済プログラム中心)、東京医科歯科大学教員、実務家(野村総研、日本政策投資銀行、日本経済研究所、他)等で、毎年、年間10回程度の研究会を重ね、その研究成果として『フィナンシャル・レビュー』(財務省財務総合政策研究所編集・発行、2008年第4号)の特集「公共部門のリスク・マネジメント」を2008年11月に刊行いたしました。また、平成19年3月にシンポジウム、平成20年2月および平成21年1月に公開講座およびIPP集中講義を開講しました。
3年間におよぶプロジェクトは、上記の出版物や公開講座等の成果を得て2009年3月、ひとまず終了し、IPPでは引き続き、”人為的リスク”(感染症リスク・環境リスク・食料安全・国際紛争リスク等)への対応を法学・行政学・国際関係・経済学の観点から学際的に検討することを目指し、新たな活動を開始しました。
【第2期:平成21‐22年度(2009年4月−2011年3月)における活動】
平成21・22年度においては、一橋大学より学内研究プロジェクト「公共部門におけるリスク・マネジメントの学際的・総合的研究」の助成を受けて、研究会を開催しつつ、継続的に研究活動を行いました。ここでは、これまで取り組んできた自然災害よりもさらに対象を広げて、インフルエンザ対策・原子力安全・食糧安全保障等も取り上げました。研究会においては、学内の研究者だけでなく、厚生労働省・農林水産省等の専門家を交えた議論も行ってきました。
また、この2年間にわたる研究の取りまとめとして、2011年3月、『リスクマネジメントと公共政策:経済学・政治学・法律学による学際的研究』(第一法規)を出版しました。出版のタイミングが、たまたま、東日本大震災の直後となり、従来の想定以上の大きなリスクが顕在化してしまった状況となってしまいましたが、本書における検討が、今回の大震災への対応を含む今後の公共政策のあり方を考えていく上で何らかの示唆を与えるものであればと考えております。