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    【業績の詳細情報】

  • 「税制と事業形態選択−日本のケース」(八塩裕之と共著)、『財政研究』(日本財政学会機関誌)、第1巻、2005年、177-194ページ。

    [論文要旨]
    税制の問題は、個々人の労働、貯蓄などに決定に影響を及ぼすだけではなく、さま ざまな節税行動を誘発しているということである。 これは、高い税率が原因であったり、特定の所得控除が存在することが原因であったりする。この論文は、給与所得控除に着目して、 個人事業者が、自営業者として税を納めるか、法人となって税を納めるかという事業形態の選択にわが国の所得税がどのような影響を 及ぼしているかを、理論および実証の両面で論じたものである。メリカとの比較もなされ、今後の日米両国の税制改革をも視野に入れた 論文である。



  • 「年金課税の実態と改革のマイクロ・シミュレーション分析」(古谷泉生と共著)、 『経済研究』、第56巻、第4号、2005年、304-316ページ。

    [論文要旨]
    日本の年金課税の問題は,給付時に公的年金等控除が適用されることによって所 得税の課税ベースが大きく侵食されていることである.この論文は,この控除が世代 間と世代内の所得税負担に及ぼしている効果を明らかにした上で,その改革として年 金という特定所得への控除である公的年金等控除を廃止し,年齢を要件とする老年者 控除の拡大によって高齢世帯の所得税負担の調整を図る。
    分析は,筆者たちが開発した,『国民生活基礎調査』(厚生労働省)の個票か ら税負担を推計するマイクロ・シミュレーションモデルによって行った.この分析に よって,公的年金等控除によって世代間・世代内で大きな所得税格差が生じているこ と,および老年者控除を100万円程度とすることで世代間の所得税負担がほぼ等しく なることが示されている.



  • 「介護保険における都道府県の役割−青森県のケース」(油井雄二、菊池順と共著)、『健康保険』、2005年、前編10月号52−56ページ、後編11月号、60-67ペー ジ。

    [論文要旨]
    国民健康保険や介護保険は、市町村が保険者となって運営されている。しかし、 すべての市町村が診療報酬明細書(レセプト)を分析したり、病院などサービス提供者と医療内容・価格などについて交渉を行うことは困難である。また、保険者が専門事業組織でなく、行政の一部署となっているという仕組み自身が、国民健康保険や介護保険において市町村が保険者としての専門性を高める上で障害となっている。そこで、この論文は、一人当たり在宅介護保険給付額が全国一である青森県を取り上げ、県下の全市町村の介護保険財政をどのように診断するべきであるかを検討した。今後、医療でも都道府県の役割が強化されるなかで、青森県をケースとして、そうした役割とはなにかを示した。今後医療にも検討を進めることを計画している。



  • 「介護保険による要介護状態の維持・改善効果―個票データを用いた分析―」(菊池潤と共著)『季刊社会保障研究』、 第41巻第3号、2005年、248-262ページ。

    [論文要旨]
    わが国の介護保険の特徴の一つは、軽度の要介護高齢者にも保険の適用を認め、その 状態の維持・改善を図ろうとしていることである。この論文の目的は、第1号被保険 者の個票データ(東京都杉並区)をもとに、介護保険の開始された2000年度から2003 年度にわたって、軽度要介護高齢者を対象として、介護保険サービスが要介護高齢者 の状態維持・改善に及ぼした効果を明らかにすることである。
    分析に先立ち、データの母体となった杉並区の介護保険の適用状況、および軽度と重 度の要介護者の区分について検討を行った。その結果、要支援から要介護2までを軽 度者として、各介護度別に分析を行った。
    対象期間を3つに分けた、1年毎の期間推計と、全期間をプールしたパネル推計をとも にプロビット分析によって行った。結果は、要介護高齢者の個人属性の制御変数(年齢、性別、寝たきり度、認知症自立度)は、状態変化に関していずれも有意であったが、介護サービスに関しては、ほとんどすべて、要介護状態の維持・改善効果を見出すことはできなかった。
    推計には、サービス内容のより慎重な取り扱いなど改善の必要性はあるが、本稿の結果は、軽度の要介護高齢者の状態悪化の抑制というわが国の介護保険の目的が、必ずしも達成されなかったことを意味する。今後、軽度要介護高齢者の状態改善に効果を持つサービスのあり方に関して、介護保険を改善して、その枠組みのなかで行うのか、それとも、状態改善をより明確な目的として、医療保険制度で対応していくのかなど検討が必要である。


  • 「財政構造改革と税制」、『日本経済研究センター会報』、2006年1月、No. 939、40−43頁。

    [論文要旨]
    2010年代初頭までに、国と地方を合わせた基礎的財政収支を 均衡化させるための歳入・歳出改革の必要性を明らかにした後、バブル崩壊後から2006年度改正に至るわが国の税制を跡付ける。 続いて、今後の税制改革の課題として、所得税負担の是正に向けた年金課税のあり方、国から地方への税源移譲の進め方、税制の抜本改革の一環として金融所得課税のあり方などを検討する。