公共経済分析Ⅱ-講義概要
時間:秋冬学期 水曜1限
単位:2単位
[ 授業の目的と概要 (Course Overview) ]
本講義では、経済学の観点から課税が個人の選択や市場均衡に及ぼす効果・帰結について学んでいく。税法の記述やその理念(公平等)に関わらず、税の経済的帰結は、税に対する個人の誘因(反応)や市場構造に依拠して決まってくる。大企業・富裕層に対する課税を「意図」しても、その「結果」が一般大衆の負担になることもある。税は国家財政の基盤であるが、その経済コストを正しく理解しなければ、財源確保・所得再分配において誤った税政策に陥る危険(リスク)のあることを強調していく。講義は主として理論をベースとするが、実証分析、現実の租税政策にも言及する。本講義では現行の税制の知識と合わせて、その経済的帰結に対する理解、規範(経済合理性)の観点から本来あるべき税制についての知見を身につけてもらいたい。
[ 他の授業科目との関連・教育課程の中での位置付け (Relation with other Courses) ]
秋学期に開講される「公共経済分析II」と合わせて履修することが望ましい。
[ 授業の内容・計画(回数・日付・テーマ等) (Topics / Schedule) ]
講義では次のテーマを取り扱う
・日本の税制の現状と課題
・課税の誘因効果:代替効果と所得効果
・所得税:労働供給・貯蓄に及ぼす誘因効果
・税等価:賃金所得税と消費税の同値性
・市場均衡と税の帰着:部分均衡分析・一般均衡分析
・課税の経済コスト(超過負担)
・法人課税の経済的帰結:国際的租税競争、法人税の負担の転嫁
・税と公平性:公平の基準の多面性
・望ましい税制の原則
・最適課税論:物品税とラムゼー・ルール、生産効率性命題
・最適所得税の理論と実際
・マーリース・レビューと消費課税
※授業内で行う内容
・板書する
・スライド(パワーポイント等)を使用する
・上記以外の視聴覚教材を使用しない
・個人発表をしない
・グループ発表をしない
・学外施設を利用しない
・ディスカッションをしない
・フィールドワークをしない
※授業内に予定している内容
・小テスト なし
・中間教場試験 なし
・口頭発表 なし
・口頭試問 なし
[ テキスト・参考文献 (Textbooks / References) ]
参考文献として代表的な教科書をいくつか挙げておく。
・畑農鋭矢・林正義・吉田浩(2008)『財政学をつかむ』有斐閣。
・スティグリッツ(藪下史郎訳)『公共経済学〈上・下〉第2版』2003-4年, 東洋経済新報社
・佐藤主光(2010)『財政学』放送大学教育振興会
・講義ノートはHPからダウンロードすること(後日公開)
[ 成績評価の方法と基準 (Requirements & Grading Allocation) ]
成績は、宿題40点満点、および期末試験60点満点とし、その総点(100点満点)の結果に基づいて評価する。平常点の詳細については、第1回目の講義で説明する。評価は相対評価による。平均点の70%未満は不可(F)とする。
[期末試験方法]
教場試験
①試験日 講義最終日に実施
②出題 試験当日即題
③持込み 不可
[ 受講生に対するメッセージ (Message to Students) ]
問題意識をもって、講義に積極的に参加すること。