研究の経過と結果
経済のグローバル化のなかで所得格差が拡大する一方、少子高齢化のもと社会保障負担が現役、若年世代にしわ寄せされている。
そうしたなかで、給付(社会保障)と負担(税)を一体として研究を行ってきた。進捗状況としては、成果の一部を雑誌特集号に掲載した。社会保障面では「人口動態と財政」班と「医療・介護」班の二つのグループを設け、マクロ、ミクロ両面で研究を推進している。税制では、経済成長との関係に焦点をあてつつ、所得課税や資産課税について研究を進化させた。海外での調査や報告を積極的に行い、成果の実践性や国際性を高めることに努力した。以下、上記各課題についての成果概要である。
(1)『一橋経済学』において一体改革の特集号を編集し成果の一部を取りまとめた。 田近栄治論文(「税と社会保障の一体改革-財政規律と安心の保障の実現」)では、本プロジェクトの包括的な論点提示を行った。 渡辺智之論文(「税・社会保障の一体改革と情報システム」)は、制度面からの検討を行った。田近栄治・菊池潤「市町村介護保険分析の標準化-第1号保険料、サービス利用状況と将来財政の分析」、河口洋行・油井雄二「介護保険と高齢者住宅」、および竹内幹「終身年金パズルの行動経済学:フレーミング効果と心理会計」では、高齢者介護と年金について論じている。
(2)社会保障面では、デンマーク、ドイツ、アメリカなどでの調査結果を踏まえて、医療・介護保険制度の財政と提供体制について取りまとめ、その日本への示唆について成果を公表してきた。
(3)税制については、スウェーデンでの調査などを踏まえて、個人所得税における税額控除などを検討してきた。法人税改革、資産所得税改革については、最新の研究を踏まえて、成果を公刊してきた。
(4)最終年度にむけて『一橋経済学』特集号を完成し、人口動態と財政、医療・介護の二班では、成果の深化と取りまとめを行う。