Gallery 5
第5回:いま「難民」について知っておかなければならないこと
~世界の『難民危機』、日本の現状と課題~
◎ 参加者の声
- 難民については今まで何度か考える機会がありましたが、現実社会でどのようなことが起こり、その状況にあわせてどのような解決策が望ましいのか、実際に支援に携わっている方からお話が聞けてとてもよかったです。 今後も、実際に社会問題に向き合ってらっしゃる方の生の声・考えを聞いてみたいと思いました。(学部 1・2 年生)
- 普段聞いているアカデミックな講義とは違うリアルな話が聞けて新鮮でした。これまで日本は外国人定住者の受け入れに関するオープンな議論を避けてきた印象があります。この先、日本にやってくる難民が増えた場合、もっと踏み込んだ議論が出てくると思うので、そのことによって効果的なシステムが整備されるきっかけになれば “チャンス” だし、欧米のような世論が分断されるきっかけになれば “危機” になってしまうのではないかと思いました。(学部 3・4 年生)
- 今年の春スペイン・マドリッドに行く機会がありました。市庁舎に大き く “Welcome Refugee” のサインが掲げられていて、正直驚きました。ヨーロッパのニュースを聞いてもっとアンチな雰囲気になっているかと思い、もっと荒れているかと思っていたので。現地の人に聞いたら、 スペインの人口で、たかが難民が来たぐらいで社会が揺らぐわけがない、と言いきっていました。なら日本はなおさらでしょう。そういった意味で Crisis とは言えないと思います。(学部 3・4 年生)
- わかりやすいご講演をどうもありがとうございました。 今回の講演で、日本の難民に対する認識は政府、市民、企業でもそれぞれ異なっているのだと感じました。(学部 3・4 年生)
- NPO で実際に難民の支援をしている方のお話は大変興味深かったです。どうすれば難民を多く受け入れられる制度を日本でつくれるのか、考えていきたいです。(学部 3・4 年生)
- 難民の受け入れ支援について NPO の方からの話が聞けてよかった。反対に政府の取り組みを聞けると面白いのではないかとも思う。(学部 3・4 年生)
- ディスカッションが多く、建設的なセミナーでした。参加者が問いかけられたときに、積極的に発言できると良いですね。 (学部 3・4 年生)
- 本日の機会を得て、日本の難民状態について新しい知識を得ることができまし た。どうもありがとうございました。(学部 3・4 年生)
- 日本にとって、難民が危機ではないことは理解しているつもりであったが、それを理論的に説明しろと言われたらロジックが甘い部分があったので、今日の講演を通じてロジックの溝を埋めることはできたと思う。(学部 3・4 年生)
- インドシナ難民受入れという前例があることは知りませんでした。新しい知識を得られて良かったです。(学部 3・4 年生)
- 確かに、日本は労働力不足が深刻化し、これから移民政策を再考すべきだと思うが、世論は移民と難民を混同しすぎだと思う。 難民が日本人の就職先を圧迫するといわれているが、それはハイテク移民の話なのではないか。(学部 3・4 年生)
- お言葉遣いを思慮深く選んでいることが伝わってきてとても感謝しました。質問にもいくつか出ていましたが、難民を経済コストとして捉えるのはやっぱり違和感を感じました。日本に同化する形で難民を受け入れてしまうと難民の個人的な幸福度が下がるのではないかと思いました。(学部 3・4 年生)
- 難民の受け入れ数だけじゃなく、受け入れ後の支援体制をもっと整えていく必要があるのだろうと思いました。(学部 3・4 年生)
- ディスカッションの時間があり、理解が深まりました。(大学院生)
- ドイツの政策との比較をより詳しく聞きたいと思いました。(その他)
◎ セミナーを終えて
日本での難民認定申請者は増加しており、昨年は約1万人に達する一方で、昨年の難民認定数は28人という事実を最近知りました(法務省の関連サイト)。私たちは、難民について、あまりに知らない(知らされていない)と感じています。
東アジアでの国際関係の緊張が高まる状況を見ても、日本は、他の国々と協力しながら、世界そして日本の平和を維持していくことが、ますます必要となっていると感じます。世界的な課題となっている難民の問題に、私たちはどのように向き合うことが望ましいのでしょうか。
今回の講演でも、他の先進国(例えばG7諸国)と比べると、日本は難民受け入れ数が少なく、申請者に対する認定率で見ても非常に低いという事実を紹介して頂きました。根本(2017)で紹介されていた数字をまとめた左表でも、その事実を確認できます。
ドイツをはじめとするG7諸国でも、数多くの難民を受け入れているという事実は、今なお世界中に紛争が起こっていることの裏返しでもあります。2015年末の世界の難民・国内避難民の数は約6,500万人と推定されています。その中には数多くの子どもたちもいることでしょう。
命を守るために、家族を守るために、故郷から逃げ出さなければならなかった人たちを、私たち日本人はほとんど受け入れていません。しかし、今後、日本が戦場や紛争地となり、命を守るために家族を連れて海外に避難しなければならなくなった時、難民申請をしても、申請を拒否され、追い出されたとしたら、どんな気持ちになるでしょうか?
怒りや悲しみの気持ちでいっぱいになり、「この国には人道支援の気持ちや考えはないのか!」と言ってしまうのではないかと思います。しかし、これまでほとんど難民を受け入れてこなかった日本人に、そのようなことを言う資格があるでしょうか?
確かに、難民の受け入れには様々な課題があることでしょう。しかし、世界中で紛争が起こり、6,500万人もの難民・国内避難民が地球上にいる状況では、命を守りあい、平和を構築・維持するために、世界の人々が助け合っていく必要があるのではないでしょうか。
言うまでもなく、最も望ましいのは、難民が生まれないように、世界の人々が祖国で暮らせるようになることだと思います。ただ、その実現にはかなりの時間がかりそうです。日本もまた、金銭的支援だけでなく、難民の受け入れに関しても、先進国としての役割を果たすべきではないかと、現場で支援を続ける石井さんのお話を聞きながら感じました。
難民の急速な受け入れが、社会的な混乱をもたらす可能性もあるのではないかと思います。それが限定的な問題であったとしても、難民の受け入れを続けることへの反対・反感につながる可能性もあります。一定の時間をかけてでも、良い形で難民の受け入れを増やしていけるように、政府のみならず、社会そして私たち自身が努力を続けていくことが大切ではないかと思いました。
難民を自然に良い形で受け入れられる社会になることは、日本が成熟した社会になることではないかとも思います。それは、日本で生まれ育った多様な「日本人」にとっても、生きやすい社会なのではないかと思います。今後とも、世界の平和の問題、そして世界で苦しんでいる人たちの問題について、日本国内の様々な問題とともに考えていきたいと思います。
今回も、学生の皆さんが真剣に話に耳を傾け、質問をしていた姿がとても印象的でした。より良い社会を作っていくために、私たちは何ができるのかについて、みんなで一緒に考えていけたらいいですね。(山重)
参考文献:
根本かおる 『難民鎖国ニッポンのゆくえ 日本で生きる難民と支える人々の姿を追って』ポプラ新書, 2017年