NO.08:田中直樹さん(公共経済,2011年修了)
私は国家公務員として地方で勤務して参りました。公共経済プログラム社会人1年課程に進学する機会をいただき、十数年ぶりに大学という環境の中で勉強することができました。私は経済学部出身でありましたが、経済学の勉強には学部時代に苦労した経験があり、不安を抱えながらの入学でした。また、職務上法律を用いることが多く、果たして本学のカリキュラムが私の職務にどのように活かせるのか、進学時そのようなことを考えていたのも事実でした。
これらの私の思いは1年の間に次のように変化してきます。まず、経済学についてですが、本学のカリキュラムでは「政策的な考え方」の習得に主眼が置かれており、ミクロ経済分析、マクロ経済分析、公共経済分析、計量経済分析などの講義がこの目的の下に全てリンクし、経済学を学ぶ意味を理解することでき、次第に勉強にも力が入っていくのを実感しました。同時に第一線で活躍される研究者や政策担当の実務家の方の公共政策セミナーではその場で応用力を試すことができたように思います。次に、この1年間が私の今後の職務にいかに活かされていくのか。具体的なことを示せば、計量経済学で学んだ実証分析の手法は私たちが職務を遂行するうえで、私たちが実践してきたこと及びこれから実践しようとすることの有効性を確かめる一つのツールとなることは間違いないと考えています。また、ゲームの理論で学んだ交渉術は、私の実務経験に照らしたとき大変に有用で参考になるものでした。ただ、このような技術的なことだけでなく、全体を通して大きな財産となったのは厳しいカリキュラムをこなす中で"考え抜く力"を養えたことだったように思います。これはいかなる職種であろうと共通に重要なことではないでしょうか。
最後に、私が本学で得た最も大きな財産についてお伝えします。それは、共に学び苦労を分かち合い支えあった仲間たちです。年齢も経歴も出身も本学を志した動機も異なる者たちが、机を並べて勉強するというのは初めての経験でした。当初は戸惑いもありましたが、課題や試験勉強を一緒になって取り組み、乗り越えるにつれて絆を深めていくことができました。また仲間の研究を通じて、医療や社会保障など私がこれまであまり関心を寄せてこなかった分野への見識も深まっていきました。何より課題や仲間の研究を一緒に考えることを通じて、支え合うことの大切さをあらためて認識し実感できたように思います。
私は1年間、これまで培ってきた実務経験と専門知識を本学における勉強や生活に可能な限りフィードバックさせながら、能力の開発と向上に努めて参りました。再び社会に戻り、今度は本学で学んだことを職務と今後の人生に活かし精進して参りたいと考えます。